- 著者:
- 池波正太郎
- 朗読:
- 神谷尚武
三ノ輪のはずれに[どんぶりや]という飯屋ができた。飯は食い放題、汁に魚に、こうこがついて七文だと大評判。
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三ノ輪のはずれに[どんぶりや]という飯屋ができた。飯は食い放題、汁に魚に、こうこがついて七文だと大評判。
十年前に、一味の者に引退金(ひきがね)を与え、お盗めからきっぱりと足を洗った老盗人が、昔を忘れられず悪戯心で三百両を盗み、又、人知れず返しに行く。
「はせ川へいぞうさまへ」たどたどしい文字で書かれたその手紙は押込みを知らせる密告だった。
船宿[鶴や]を経営している小房の粂八から、巣鴨の徳善寺に押し込みの計画ありと知らせを受けた平蔵は、寺の寄宿人を装って見張りを続ける。
長久保の佐助は、偶然宗平の店に立ち寄った。昔馴染みとの再会を喜んだ宗平は、五郎蔵おまさと共に佐助の息子の敵討ちの手伝いをすることになる。
久しぶりに火付盗賊改方の密偵 彦十、宗平、五郎蔵、粂八、伊三次、おまさが集まって酒を酌み交わしていた。
火付盗賊改方の与力をつとめる富田達五郎は、夜の川面で商人の橋本屋と船頭を切って捨てた。
眉が濃く一本につながって見えるその人を、木村忠吾はひそかに一本眉の旦那と呼んでいた。
岸井左馬之助は平蔵と共に通った高杉道場の先輩、野崎勘兵衛に出会った。
密偵「馬蕗の利平治」は、昔の盗人仲間「鷹田の平十」から、腕っ節の強い助っ人が欲しいと頼まれる。
密偵伊三次は、細身の身体をきびきびと動かし最近はすることが、いちいち平蔵の腑に落ちるようになってきた。
船頭の常吉は、今日もたっぷりと灯油の入った竹筒を腰に、暗い川岸にじっと身を潜めていた。
のんびりと酒食を楽しんでいた平蔵は、隣部屋の客の声を聞き、かつて弟のように可愛がっていた池田又四郎だと確信した。
目黒不動尊参詣を兼ねて市中巡回の平蔵は、突然の豪雨に空家に駆け込んだ。
密偵小房の粂八は、料理屋「万亀」の物置小屋へすばやく消えた馴馬の三蔵を見て、(あ、居坐り盗めをやりなさるな)と看てとった。
川半の座敷女中おさわは、嘗役・針ヶ谷の宗助の女房で亭主の仕事を助けていたが、一方で盗賊沼目の太四郎の女でもあった。
密偵仁三郎は、昔の仲間鹿谷の伴助に「一緒にお盗めを・・・」と誘われる。伴助と歩む姿を、功名心の強い同心・山崎庄五郎にみられ、平蔵への報告を止められる。
日頃から、火付盗賊改方の探索に協力してくれている桶屋の富蔵・おろく夫婦の子供(養子)がかどわかされた。
今は、密偵となっている馬蕗の利平治は、大仕掛けの盗みをはたらく盗賊の首領・妙義の團右衛門に「江戸での盗みは不案内ゆえ助太刀を」と乞われ、快く承知する。
女密偵おまさは、かつて同じ頭の下で引き込みを勤めた女盗のお元を見かけた。