- 著者:
- 野村胡堂
- 朗読:
- 後藤敦
大村兵庫は長襦袢一枚で縛り上げられたお町を弓の折で打ち苛み、自白を迫ります。「あッ、ツ」身体をねじ曲げて、歯を食いしばる女の苦悶の姿。「言えッ、女、言わぬか」
オーディオブックのことなら名作・名著を文芸から一般・学術書まで提供することのは出版オーディオブック。日本の心シリーズ、文豪、時代小説など脳を健康にするオーディオブックを揃えています。
大村兵庫は長襦袢一枚で縛り上げられたお町を弓の折で打ち苛み、自白を迫ります。「あッ、ツ」身体をねじ曲げて、歯を食いしばる女の苦悶の姿。「言えッ、女、言わぬか」
「ここへ追い込めば袋の鼠だ。手前かオレが縮尻らなきゃア、逃げられる場所じゃねえ」ところが『千里の虎』は平次とガラッ八の前から掻き消すように消え失せたのです。
金沢町の小町娘・油屋のお春失踪の知らせに「お春坊は無事平穏に生きながらえるにしちゃ少し綺麗過ぎらァ」と神田祭の宵宮もそっちのけで飛んでいく平次でしたが。
「橋場の恵大寺の墓場に、チョクチョク出るって話をお聞きですかい」とガラッ八、両手を胸にダラリと泳がせて「美い女だってネ」今回は墓場の美女のお話です。
引っ越して来た人間が怪しいと目をつけた平次、「その中で一番泥棒と縁の遠いのは?」「驚いたね、怪しいのは調べ上げて来たが」と言いつつ八五郎は二人の名をあげました。
変なものが出て困るという両替屋の升屋に「化け物退治は気が乗らねえ。が、主人かお内儀に逢ったら、これだけの事を言っておくがいい」知恵を授ける平次でした。はたして‥
喜兵衛が田原屋から届けられた薬を飲んで死に、大騒ぎしているところへまた田原屋からの使いが。「ここへ使いに来たのは、今日は二度目だろうね」「いえ、今始めて参りましたが
「お神さん、気の毒だが、お前さんの身体を調べさせて貰いたいが――」という銭形の平次に、「裸体になりましょうか、親分さん」悪たれた年増女はニタリとしました。
「親分、犬が女を殺すでしょうか」「咬み殺されたのかい」「そんな事なら不思議はないが、女が匕首で刺されて死んでいるのに、雪の中の足跡は犬なんだそうで――」
死んだお新を最後に見たのは風呂屋のお神らしく「顔へ陽がさしたのを、奥からチラリと見て、——あゝいつもお綺麗なことだ——とおもったそうで」それを平次は聞きとがめました。
「ねえ」と、平次「暖簾が大事か、人の命が大事か、恋が大事か、義理が大事か。――岡っ引きの私には解らねえ。」首を挙げたお町の頬には真珠色の涙がポロポロこぼれます。
ツルギで刺されて両国橋の真ん中から吊るされたていた娘「これほどのきりょうなら、すぐ身許は解るだろうな」それは中国の大藩の浪人者・梶四郎兵衛の娘お勇でした。
「自分で育てると草花も我が子のように可愛いものだ」妙なことを言い出す平次、「殺した下手人は、朝顔の垣を除けて大廻りして逃げている。こんな優しい人殺しは珍しかろう」
八五郎の寝ている部屋に勝手にあがりこんだ艶めいた女「わッ、何をしやがるんだ。俺は女が嫌いだよ」ガラッ人の八五郎、自慢ではないが、これが臍の緒切って以来の女難でした。
「銭形平次――と言うから、どれほどの男かと思ったが、なんと弱い野郎か―― って言やがる」と、八五郎。「何? 手前を平次と間違えたのか。そいつは面白い」平次は膝を乗出します。
秋の日の昼下がり「親分、変な野郎が来ましたぜ」そう言って八五郎が案内してきたのは「私は、地獄から参ったものでございます」傷だらけな凄まじい顔の男でした。
麻布狸穴で浪人・福島嘉平太が殺された「微塵流の遣い手で、さる大藩の指南番までした人物だそうだ」「それが、竹べらで殺られたんですか」「変っているだろう」
直木賞受賞作の『凍える牙』の女刑事・音道貴子シリーズ第二弾にあたる短編集。表題作の『花散る頃の殺人』ほか、『あなたの匂い』『冬の軋み』『長夜』『茶碗酒』『雛の夜』の、全6話収録。
「あの阿魔は全く綺麗すぎるから、何か間違いがなきゃアいいがと思っていたが、とうとうこんな事になりやがった―」友次郎は殺された綱吉の女関係から下手人の当たりをつけました。
「すぐ行って下さるでしょうね」と言う八五郎に「十手捕縄を預かる立派な御用間が、殺しの現場を見て、驚いて飛んで来る奴があるか」と平次「下手人を挙げて来い、馬鹿野郎」