- 著者:
- 野村胡堂
- 朗読:
- 後藤敦
江戸第一番の吝ん坊の鳴子屋の女主人お釜は、評判の人相見玄々斎が「七日経たないうちに、死ぬ」と言ったその七日目の晩に死に、家中の者はいくらか得をした様子です。
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江戸第一番の吝ん坊の鳴子屋の女主人お釜は、評判の人相見玄々斎が「七日経たないうちに、死ぬ」と言ったその七日目の晩に死に、家中の者はいくらか得をした様子です。
「でも、万一ということがあるでしょう。あっしがその贋金造りを捕えたら、どうなるでしょう、親分」たいそうな御褒美をもらったつもりでニヤニヤする幸せなガラッ八です。
神田中の若い男を狂わせ八丁荒らしと言われた魅力の女が殺された。「水本賀奈女をうんと怨んでいた者があったはずだ、心当りはないのか」「そりゃ、たくさんありますよ」
井筒屋重兵衛が頓死する前、秘蔵の骨董が次々と叩き割られる騒ぎがあったという。「怪しい人間は三人ある。」鼻の良い八五郎の話は平次の退屈病を吹き飛ばしてくれます。
質屋吾妻屋金右衛門が殺された。現場の部屋の窓は半分開いていたという。「ところが、窓いっぱいに張った女郎蜘蛛の巣があるだろう」「すると?」「曲者は家の者だ――」
何事もなく終わった秤座守随家の騒動をすっかり八五郎から聞いた平次「面白いな、八」「ヘエ、――面白いんですか、――これがね」「ただの悪戯や脅かしじゃあるまい、俺も行ってみよう」
八五郎が日本一キナ臭い顔をして言うに、届いた手紙にあったのは「二千両という大金を、この春処刑になった大泥棒の矢の根五郎吉が、このあっしに形見にやるという文句だ」
「親分、助けて下さい」ガラッ八のところへ飛込んで来たのは「何だ、植木屋の松さんじゃないか」松五郎は越前屋大番頭生首事件にかかわる意外な事実を打ち明けたのです。
「二年前に死んだ人間が人を殺した?」「その上まだまだ四五人は殺してやるというんだから大変で――」「誰がそんな事を言うんだ?」「二年前に殺された人間ですよ
「勝造さん親娘と、菊之助さん夫婦は、何を企むか、解ったものじゃございません」御新造のお信が怪死、若主人総七の身を案じる越前屋番頭徳三郎をなだめる平次でしたが・・・
大村兵庫は長襦袢一枚で縛り上げられたお町を弓の折で打ち苛み、自白を迫ります。「あッ、ツ」身体をねじ曲げて、歯を食いしばる女の苦悶の姿。「言えッ、女、言わぬか」
「ここへ追い込めば袋の鼠だ。手前かオレが縮尻らなきゃア、逃げられる場所じゃねえ」ところが『千里の虎』は平次とガラッ八の前から掻き消すように消え失せたのです。
金沢町の小町娘・油屋のお春失踪の知らせに「お春坊は無事平穏に生きながらえるにしちゃ少し綺麗過ぎらァ」と神田祭の宵宮もそっちのけで飛んでいく平次でしたが。
「橋場の恵大寺の墓場に、チョクチョク出るって話をお聞きですかい」とガラッ八、両手を胸にダラリと泳がせて「美い女だってネ」今回は墓場の美女のお話です。
引っ越して来た人間が怪しいと目をつけた平次、「その中で一番泥棒と縁の遠いのは?」「驚いたね、怪しいのは調べ上げて来たが」と言いつつ八五郎は二人の名をあげました。
変なものが出て困るという両替屋の升屋に「化け物退治は気が乗らねえ。が、主人かお内儀に逢ったら、これだけの事を言っておくがいい」知恵を授ける平次でした。はたして‥
喜兵衛が田原屋から届けられた薬を飲んで死に、大騒ぎしているところへまた田原屋からの使いが。「ここへ使いに来たのは、今日は二度目だろうね」「いえ、今始めて参りましたが
「お神さん、気の毒だが、お前さんの身体を調べさせて貰いたいが――」という銭形の平次に、「裸体になりましょうか、親分さん」悪たれた年増女はニタリとしました。
「親分、犬が女を殺すでしょうか」「咬み殺されたのかい」「そんな事なら不思議はないが、女が匕首で刺されて死んでいるのに、雪の中の足跡は犬なんだそうで――」
死んだお新を最後に見たのは風呂屋のお神らしく「顔へ陽がさしたのを、奥からチラリと見て、——あゝいつもお綺麗なことだ——とおもったそうで」それを平次は聞きとがめました。