- 著者:
- 野村胡堂
- 朗読:
- 後藤敦
「ねえ」と、平次「暖簾が大事か、人の命が大事か、恋が大事か、義理が大事か。――岡っ引きの私には解らねえ。」首を挙げたお町の頬には真珠色の涙がポロポロこぼれます。
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「ねえ」と、平次「暖簾が大事か、人の命が大事か、恋が大事か、義理が大事か。――岡っ引きの私には解らねえ。」首を挙げたお町の頬には真珠色の涙がポロポロこぼれます。
ツルギで刺されて両国橋の真ん中から吊るされたていた娘「これほどのきりょうなら、すぐ身許は解るだろうな」それは中国の大藩の浪人者・梶四郎兵衛の娘お勇でした。
「自分で育てると草花も我が子のように可愛いものだ」妙なことを言い出す平次、「殺した下手人は、朝顔の垣を除けて大廻りして逃げている。こんな優しい人殺しは珍しかろう」
八五郎の寝ている部屋に勝手にあがりこんだ艶めいた女「わッ、何をしやがるんだ。俺は女が嫌いだよ」ガラッ人の八五郎、自慢ではないが、これが臍の緒切って以来の女難でした。
「銭形平次――と言うから、どれほどの男かと思ったが、なんと弱い野郎か―― って言やがる」と、八五郎。「何? 手前を平次と間違えたのか。そいつは面白い」平次は膝を乗出します。
秋の日の昼下がり「親分、変な野郎が来ましたぜ」そう言って八五郎が案内してきたのは「私は、地獄から参ったものでございます」傷だらけな凄まじい顔の男でした。
麻布狸穴で浪人・福島嘉平太が殺された「微塵流の遣い手で、さる大藩の指南番までした人物だそうだ」「それが、竹べらで殺られたんですか」「変っているだろう」
「あの阿魔は全く綺麗すぎるから、何か間違いがなきゃアいいがと思っていたが、とうとうこんな事になりやがった―」友次郎は殺された綱吉の女関係から下手人の当たりをつけました。
「すぐ行って下さるでしょうね」と言う八五郎に「十手捕縄を預かる立派な御用間が、殺しの現場を見て、驚いて飛んで来る奴があるか」と平次「下手人を挙げて来い、馬鹿野郎」
「親分、大変な野郎が来ましたぜ」と八五郎「りゃんこ(二本差)が二人――」「馬鹿野郎、御武家を野郎呼ばわりする奴があるものか」通されてきたのは悪相と美男の立派な御武家
「ほんの私の寸志、香奠の代りだが―」と、相模屋喜兵衛がだした帛紗を松五郎は叩き返しました。「金を有難がるのは金持ばかりだ、ざまア見やがれ」花弁のように乱れ散る小判百枚。
「怪談なんですよ」「フム、面白そうだな」「小永井の屋敷から、毎晩女の悲鳴が聞えるって、町内は大騒ぎですよ」屋敷に潜り込んだ平次が見たのは、井桁に縛られた半裸の娘。
下谷の徳蔵稲荷に連れ立って参詣する道の途中「八、あれをつけてみな」「ヘエー、あの美しい新造が曲者なんですかい。驚いたな」張り切って飛び出したガラッ八の首尾や如何に。
近江屋にあやかしがでる「お坊っちゃまの痩せ細るのを見ていると、お気の毒でお気の毒で」とすがる女中に、医者をたのめと平次が言うと「お嬢様の命を狙う者があるのでございます」
めったにない美い女が「悪者につけられています」と平次のもとにやってきた。主人から預けられた品を狙われているといって取り出したのは物々しく封印をされた豪華な手筺。
雪の宵、越後屋佐吉の女房が殺された「相手が人間だか化け物だか知らないが、あんまり人を馬鹿にしたやり口だ」何としてでも女房の復讐を討ってくれと、佐吉は平次に頼み込んだ。
時代小説と言えば!捕物帳といえば!ご存知銭形の親分とガラッ八、罪を憎んで人を憎まぬ人情味あふれる大活躍、絶品の語り口でお楽しみください。『金色の処女』ほか二十話収録。