- 著者:
- 浅田次郎
- 朗読:
- 小川道子
祖母は美しい人だった。万事派手好みで上等でなければ気がすまなかったのに芝居は三階の大向こう。闇の奥から「音羽屋ッ!」。通さえも振り向く実にいい声だった。
オーディオブックのことなら名作・名著を文芸から一般・学術書まで提供することのは出版オーディオブック。日本の心シリーズ、文豪、時代小説など脳を健康にするオーディオブックを揃えています。
祖母は美しい人だった。万事派手好みで上等でなければ気がすまなかったのに芝居は三階の大向こう。闇の奥から「音羽屋ッ!」。通さえも振り向く実にいい声だった。
「さすがだね、旦那、サマになってる。」スタジオで肖像写真を撮影するとき、祖父が客の表情や姿勢を直さないのは珍しかった。「ぱばあが惚れるのも無理はねえな。」
しんそこ惚れた男に身請けされるなんてことがあるものだろうか。 ・・・月島の上に昇る見事な月の下で、時次郎との暮らしをあれこれ夢見てミノの胸は膨らんだ
塚田はタイプの違う社長に戸惑いながら鷹揚で照れ屋の社長の人柄に惹かれていった。・・社長の持馬が大勝した日、競馬場から向かった先はガード下の靴磨きのところだった。
世の中ってへんてこだから、いろんなところでバランスを保っている。 だから わざとべつのほうを狙ってその結果が思いがけないところに出ることもある・・・
久しぶりに訪ねた別れた妻の家。犯罪を繰り返し警察から逃げる息子。リビングに置かれた大きな箱。——中には何が入っているのか。
リビングの大きなガラスの汚れが気になりだした。 ある日、ポストに投げ込まれたチラシ、 「○○大学お掃除研究会、気軽にご用命下さい」・・・
戦争の傷跡を残す大阪で、河の畔に住む少年と廓船に暮らす姉弟との短い交友を描く。
白球に全霊をそそいで走るひろいひろいダイヤモンドの輝きーー ふるぼけたファーストミットに、“ホーム”プレートに、重なる思い。野球を通して語られる人生へのオマージュ。
3人の子供が無事大学を卒業した。26年、共に過程を築いてきた妻が言う、「別れてくれ」と。「二十六年間、あなたの妻というより、あなたの仕事の妻であったような気がする」・・・
高等学校の制帽をかぶり紺絣の着物に袴をはき学生カバンを肩に、高下駄をはき天城の坂道を登って行った。私の期待通り、その峠の茶屋で旅芸人の一行が休んでいた。
鎌倉円覚寺の茶会で、今は亡き情人の面影をとどめるその息子、菊治と出会った太田夫人は、お互いに誘惑したとも抵抗したとも覚えはなしに夜を共にする……
結婚したものの、結婚に罪悪感をいだく菊治はーー 川端康成の代表作『千羽鶴』の続編として書き始められたものの未完に終わった、生々しく、清冽な、うつくしい物語。
その日の午後、昌子は買物に出た帰りに、若宮大路にある鎌倉彫の源氏堂によった。季節はずれの涼しい日で、街にはどこかもう夏の名残が感じられる一刻であった・・・
〈こんな夢を見た・・・ 〉 聴く10の不思議な夢の物語は味わい深く、奥深く、今また一味違う夢を見せてくれることでしょう。
〈花の命は短くて、苦しきことのみ多かりき〉 うつくしく、なのに、いや、だからこそ踏みにじられ苦しむ花。つかれはてた女、そして男。慈しみを込めて描かれた端正な佳作。
〈花の命は短くて、苦しきことのみ多かりき〉 うつくしく、なのに、いや、だからこそ踏みにじられ苦しむ花。つかれはてた女、そして男。慈しみを込めて描かれた端正な佳作。
調香師の妻から香ったその匂いは、調香師を深く傷つけた—— 悲しい、嬉しい、面白い、楽しい、憎らしい、怖い、すべてがある。この掌編たちは、アナタのなかの一片たちなのだ。
ホテルまで乗ったタクシーの運転手は“黒魔術に気をつけろ”と言った―— うつくしく、面白く、おそろしく、圧倒的で、つまり海そのものを切り取ったような、幻想的な掌編集。
男は自分の娘の「父親」に疑いを抱いてしまった・・・ 人生の深奥を見つめた、珠玉の一篇。