- 著者:
- 岡本綺堂
- 朗読:
- にのみやみお
文明開化の空の下、新聞記者に半七老人が語る江戸の思い出話・・・話の妙味ははもとより、厳密な時代考証のうえに作者自身の体験が生身の厚みを加える。ーーおもしろい!
オーディオブックのことなら名作・名著を文芸から一般・学術書まで提供することのは出版オーディオブック。日本の心シリーズ、文豪、時代小説など脳を健康にするオーディオブックを揃えています。
文明開化の空の下、新聞記者に半七老人が語る江戸の思い出話・・・話の妙味ははもとより、厳密な時代考証のうえに作者自身の体験が生身の厚みを加える。ーーおもしろい!
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本郷切っての人気娘お駒が殺された。人形のような顔に何の怨みも驚きもなく、幸福な思い出し笑いでもしているかの表情で事切れていた。「やはり、あのばかか」‥
大名の目にとまった町娘が産んだ男の子が霍乱で死んだというのです。「一万二千石を叩き潰す方がどんなに溜飲が下がるかわからねえ」孫を失った源太郎の意地がはじけます。
「俺の口から『八五郎は大した腕だから、さぞお役に立ちましょう』とは言えないじゃないか」と平次に送り出された先で、八五郎、間抜けな手柄と、見事な手柄をたてました。
万両分限の大町人河内屋又兵衛の跡取りが殺された。疑いは代わって跡を継ぐ者にかけられたが。「親分、泥棒は物を盗るのが商売でしょう」すべては仕組まれていたのです。
一国一城にも代え難いと言われた天下の名器が、大々名家から内々に借受けていた玉屋金兵衛宅の奥座敷から消え失せた。「私はまず腹でも切らなければ済まぬ」
「――なア八、憎いのは町内の衆じゃなくて、人間を牛芳や人参のように斬って歩く、辻斬野郎じゃないか」その憎いのは、意外なところにひそんでおりました。
「ヘエーー、本当ですか、親分」八五郎は驚いて存分に鼻の下を長くした。与力笹野新三郎の役宅で屠蘇を祝ったばかりの帰り途、平次が一杯呑み直そうと言い出したのだった。
東照宮伝来の名刀を偽造した御徒士町の研屋五兵衛が自害した。「晩酌を一本つけさせ、いい機嫌で御飯を済ました人が、窓を開けたままで、自害する人があるでしょうか」
泥棒の物音を隠す狸囃子。「本所の狸囃子というのは話の種にはなっているが、真当にそんなものがあるとは思わなかったよ」「知らない方は皆んなそうおっしゃいます」
「私の大事の大事の、命より大事の手箱が無くなった」騒ぐ女に中身を聞くと、海雲寺様の富籤が一枚入っているという。「外には」「外には何にもありゃアしません」
「誰です、その下手人は」「手前だけに言っておくが、あの肥っちょの、ニヤニヤした野郎だよ」「えッ」平次の推理当たるや当たらざるや・・・!?
「親分、子さらいが流行るんだってネ」八五郎が噂する間にも、また一人。「俺の縄張うちへ来ちゃ放っておけまい」しかしこのたびの件は、流行りの人さらいとは様子が違います。
「お政が来たはずじゃないか」「でも、それは勘定に入らないでしょう。殺された人ですもの」「なるほど、そう言えばその通りだ」・・平次は謎めいた言葉とともに苦笑します。
「この下手人は、三輪の兄可が晩んだ板倉屋でもなきゃ、名乗って出たお前でもないのさ。まアまア俺に任せておきな」細工は流々仕上げを御覧じろ、の平次であります。
「――不景気と言や、親分、近頃銭形の親分が銭を投げねえという評判だが」とはガラッ八の減らず口。・・お待たせしました。平次の颯爽たる投げ銭の技、お楽しみください。
「それでも文句を言うなら、結納の代りだとか何とか、いい加減な事を言って、これを見せるがいい」平次は何やら風呂敷に包んだ品をガラッ八に持たせ、策を授けるのでした。