- 著者:
- 池波正太郎
- 朗読:
- 三好翼
千駄ヶ谷は法雲山・仙寿院門前の茶店〔蓑安〕名物の草もちを一人ですべてつくっている嘉平老人は、実は法楽寺の直右衛門一味でその名を名草の嘉平といった。
オーディオブックのことなら名作・名著を文芸から一般・学術書まで提供することのは出版オーディオブック。日本の心シリーズ、文豪、時代小説など脳を健康にするオーディオブックを揃えています。
千駄ヶ谷は法雲山・仙寿院門前の茶店〔蓑安〕名物の草もちを一人ですべてつくっている嘉平老人は、実は法楽寺の直右衛門一味でその名を名草の嘉平といった。
「こりゃあ、御手柄だ」冷酒を満たした茶碗を手に聞いた岸井左馬之助の話に、長谷川平蔵は真顔になり「いくらでも恩に着よう」「ざまあ見ろ」左馬之助、大得意である。
平蔵はニツ目橋にあるなじみの軍鶏なべ屋〔五鉄〕へ密偵の彦十を呼び、夜鷹殺し捕縛のための策を練った。方策は「たった一つしかごぜえやせんよ、鋏つぁんの旦那」「む。囮か」
〔瀬音の小兵衛〕は、浅草観世音の境内でばったり再会した昔なじみのおまさとともに、昼飯――菜飯やとうふの田楽を口に運びながらも深い考えに沈んだ。
「植込みの向うから銭を投って、眼を潰そうとしたのは、銭形の親分に相違ないと思い込んでいるんです」美しいお品は艶やかに涙をこぼしながら、あんまりだ、と訴えます。
与力笹野新三郎の出役をお願いして、浪花屋の主人奉公人一同揃えて「違ったら、違ったと言って貰おうか」平次はひとつの考えを胸に、ズイと一同を見廻しました。
「親分、変な敵討だったね」人を害めれば、必ず敵討に狙われ、一生危険にさらされ通しの自分の生命を感じなければならない時代におきた、妙な事件の顛末です。
大枚五両をはたいて不死の霊薬を味わった八五郎「眼を覚してみると――親分の前だが、あれが本当の極楽というものかも知れませんよ」その歓楽境を不器用な舌で語るのです。
「大文夫でしょうか親分、そんな判じ物みたいな事で」不安気な八五郎に「洒落っ気は人間の癖だ。この狙いが外れたら、俺は十手捕縄を返上するよ」と平次。洞察力が光ります。
「私は、たった一人の母親さえ満足に養えない、意気地のない男です。」自分の腸を叩きつけるような藤六の言葉に、平次も知らず泣かされます。
江戸第一番の吝ん坊の鳴子屋の女主人お釜は、評判の人相見玄々斎が「七日経たないうちに、死ぬ」と言ったその七日目の晩に死に、家中の者はいくらか得をした様子です。
「でも、万一ということがあるでしょう。あっしがその贋金造りを捕えたら、どうなるでしょう、親分」たいそうな御褒美をもらったつもりでニヤニヤする幸せなガラッ八です。
文明開化の空の下、新聞記者に半七老人が語る江戸の思い出話・・・話の妙味ははもとより、厳密な時代考証のうえに作者自身の体験が生身の厚みを加える。ーーおもしろい!
文明開化の空の下、新聞記者に半七老人が語る江戸の思い出話・・・話の妙味ははもとより、厳密な時代考証のうえに作者自身の体験が生身の厚みを加える。ーーおもしろい!
文明開化の空の下、新聞記者に半七老人が語る江戸の思い出話・・・話の妙味ははもとより、厳密な時代考証のうえに作者自身の体験が生身の厚みを加える。ーーおもしろい!
「僕だってやられちゃうかもしれないよ」沖田総司も一目置く”鬼貫”は、守銭奴であった。命を惜しむ侍であった――激動を生き抜いた男たちが語る”吉村貫一郎”の生き様。
神田中の若い男を狂わせ八丁荒らしと言われた魅力の女が殺された。「水本賀奈女をうんと怨んでいた者があったはずだ、心当りはないのか」「そりゃ、たくさんありますよ」
井筒屋重兵衛が頓死する前、秘蔵の骨董が次々と叩き割られる騒ぎがあったという。「怪しい人間は三人ある。」鼻の良い八五郎の話は平次の退屈病を吹き飛ばしてくれます。
質屋吾妻屋金右衛門が殺された。現場の部屋の窓は半分開いていたという。「ところが、窓いっぱいに張った女郎蜘蛛の巣があるだろう」「すると?」「曲者は家の者だ――」
何事もなく終わった秤座守随家の騒動をすっかり八五郎から聞いた平次「面白いな、八」「ヘエ、――面白いんですか、――これがね」「ただの悪戯や脅かしじゃあるまい、俺も行ってみよう」