- 著者:
- 半藤一利
- 朗読:
- 半藤一利
「当時の幕府はペリーが来る事をすでに知っていた。」知っていたにもかかわらず、なぜ対策が取れなかったのか?など、太平洋戦争につながる日本人的体質まで踏み込む。そして、黒船の詳細なスペックを紹介し、その実力が如何ほどであったかという検証は、大変に興味深い話です。
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「当時の幕府はペリーが来る事をすでに知っていた。」知っていたにもかかわらず、なぜ対策が取れなかったのか?など、太平洋戦争につながる日本人的体質まで踏み込む。そして、黒船の詳細なスペックを紹介し、その実力が如何ほどであったかという検証は、大変に興味深い話です。
まずはペリー騒動の起きる7年も前に外国の脅威を予見し徳川斉昭に軍艦建設を上申した阿部正弘の紹介。そして、本題へ。日本にもたらされたアヘン戦争の情報が当時の武士たちに衝撃を与え、戦争に対する見方、国に対する考え方に強い影響を及ぼした。開明的な武士たちの間に攘夷論や西洋の学問への関心を呼び起こし、明治維新のスタートを作るきっかけになったのがアヘン戦争であった、というお話。そして儒学者であり攘夷論者であった佐久間象山が蘭学に転向する様子も描きます。
黒船の詳しい報告が江戸に届き、幕臣が集まり対応策を協議する。蜂の巣をつついたような江戸市中の大騒ぎを江戸時代の資料から紹介。泰平の世に甘んじて実用的な武具を失っていた大名・旗本達が急遽調達に走ったため、物価に影響を及ぼした、という話など、リアルな黒船騒乱、そしてたった数隻の船におびえた幕府の内幕も語ります。
6月5日、黒船対策を幕閣間で協議するも難航。阿部正弘は意見調整に奔走する。強硬攘夷論者の水戸・徳川斉昭から阿部は「穏便」の言を引き出すも、浦賀にいた黒船が静寂を破り江戸湾へ侵入してくる。問いただす幕府に対してペリーは姿を現さない。フィルモア大統領は戦争をするつもりが無かったにも関わらず、ペリーの卓越した交渉術、脅しのテクニックによって振り回される江戸幕府。半藤一利はその術に未来のマッカーサーを見る。江戸時代から沖縄を狙っていた、アメリカの日本戦略史まで観点を広げ、ただの歴史トリビアに終わらない話題が魅力です。
驚くべきことに江戸幕府は、黒船対応策について広く市民にまで意見を求めた。画期的ではあるが、幕府の権威を揺るがす行為となった事も事実であり、同時に勝海舟(麟太郎)という市井の優秀な人材を発掘できた事も事実。そして一般の庶民が幕府に提出した奇天烈なアイデアを紹介。それによると、潜水艦を考案した市民がいたとか、いないとか。その他にも大名54藩のうち、「開国」と「攘夷」がどの程度の割合であったか、など興味深いデータも披露。数カ月にわたる協議のうえ日米和親条約が結ばれ、近代日本の幕が開ける。
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