眠っておけ、明日はまた踏んだり蹴ったりされ、
くやし泣きをしなくちゃあならないんだからな」
風の吹溜まりに塵芥が集まるようにできた貧民街で懸命に生きようとする
庶民達の人生を鬼才山本周五郎が描く人生の実相を捉えた異色作『季節のない街』
その「街」へゆくのに一本の市電があった。
ほかにも道は幾つかあるのだが、市電は一本しか通じていないし、
それはレールもなく架線もなく、また車体さえもないし、
乗務員も運転手一人しかいないから、客は乗るわけにはいかないのであった。
要するにその市電は、六ちゃんという運転手と、幾らかの備品を除いて、
客観的にはすべてが架空のものだったのである・・・。
六ちゃんをはじめとする貧困街のそれぞれの変わった物語。
全ての賞をを辞退した鬼才。
山本周五郎は明治生まれの作家です。
時代小説や庶民を主人公とした小説が多く、直木賞など数々の賞受賞するのですが、
どの賞も辞退して受け取らなかった異例の作家です。
現在でも山本周五郎の作品は映画やドラマ、舞台など様々なところでまだまだ根強い人気があります。
代表作はさぶ、赤ひげ診療譚、樅の木は残ったなどがあります。
その他の朗読作品はこちら。
「プリズンホテルシリーズ」 著:浅田次郎
「鬼平犯科帳シリーズ」 著:池波正太郎