直木賞受賞作品であり、2度ドラマ化された『凍える牙』でお馴染みの美人刑事音道貴子の短編集がついに朗読作品になりました。
音道貴子、33歳、バツイチ、愛車は大型のバイク。
役職が高い訳でもなく、これと言った特技があるわけでも無く、
女性が男社会である警察の刑事となり事件解決に取り組む姿が描かれています。
自分の居場所や、プライベートを犠牲にしてまで仕事に取り組むべきなのかを葛藤しながらも日々を送る乙道貴子の
心境が聴きどころです。
また、巻末では前作『凍える牙』で登場した滝沢刑事と乃南アサの架空対談という作者と登場人物の
会話の企画が新鮮です。
凍える牙(1996年4月 新潮社 / 2000年2月 新潮文庫 / 2007年11月 新潮社【新装版】)
花散る頃の殺人(1999年1月 新潮社 / 2001年8月 新潮文庫) - 連作短編集
鎖(2000年10月 新潮社 / 2003年12月 新潮文庫【上・下】)
出典 Wikipedia
前時代的な業界、男社会で働くマイノリティな女性の悩み、
立ち回り方、ストレス、そんな中で見つけたささやかな楽しみを
乃南アサが巧みに表現しています。
近所付き合いの悩み、家族、私生活などと共に日々の事件を追う姿は現在でも共感してしまいます。
『凍える牙』に引き続きナレーター大森ゆきが音道貴子の日常を朗読します。
とあるビジネスホテルで老夫婦の変死体が見つかった。
捜査を進めていくうちに浮かび上がった暗い過去。
そして一人の男にたどりつく。
老夫婦が所持していた写真が意味するものとは。「花散る頃の殺人」より。
多発する幼児の連れ去りとゴミの盗難。
なんと音道貴子も被害に遭ってしまう。
下着や靴などを同僚に見られてしまいからかわれる音道貴子。
ゴミを漁る犯人とは一体何者なのか・・・?「あなたの匂い」より。
家族や自分の将来に不安を抱きつつも捜査に追われる
等身大の音道貴子の日常が細やかに描かれています。
「冬の軋み」 「長夜」 「茶碗酒」 「雛の夜」 など全6話収録。
音道貴子の日常をのぞき見れる短編集で刑事の休む間もない大変さが分かりました。
ネタバレになってしまうので内容は伏せますが、
滝沢刑事と乃南アサとの架空対談は音道貴子ファンなら必聴です。この作品は
前作の『凍える牙』を聴いてから聴くと登場人物に次々と肉付けされていくので面白いです。